読売新聞

渋沢栄一は明治を代表する実業家。第一国立銀行(現みずほ銀行)を始め500社近い企業の創立・発展に貢献した人物である。孔子の教えを実践し、公益を追求しながら巨富を築いた。代表的な著書は『論語と算盤』で、2年前に文庫に収められ、古めかしい文章ながらかなり売れた。/それ以外にも、渋沢関連本はたくさん出ており静かなブームが来ている。経済が手詰まりだから、目先の利益にとらわれて不道徳なことを考える輩が増えそうだ。警鐘が小さな音で鳴り始めているのだろう。/最近、渋沢のもう一つの代表作『青淵百話』が、抜粋された形で『渋沢百訓論語・人生・経営』(角川ソフィア文庫、743円)として復刊された。彼は利益と道徳の大きさは比例するという信念を持っている。/「利益を棄てたる道徳は、真正の道徳でなく、また完全な富、正当な殖益には、必ず道徳が伴わなければならぬはずのものである」/なぜこんな信念を持ったのだろう。彼は農民に生まれたが、武士に噺憧れた。努力して武士になるが、明治維新で武士を捨てざるを得なくなる。一旦は官僚になるが、挫折し、ビジネスの世界に身を投じる。士農工商の士から商に転じたのだ。渋沢は武士のフォームで一生を通したかったのであるまいか。さらに武士の精神はビジネスにも通じるはずだ、と信じたかったのだ。/渋沢が少年時代に、父親から何度も聞かされた話が特に気に入った。近所に働き者の爺さんがいて、彼は一財産をつくったが、貧乏な時と同じように勤勉に働いた。近所の人は「楽に老後を送ればよいのに」という。だが、爺さんはこういう。私は働くことが何よりの楽しみだ。働いてゆくうちに楽しみの糟ができる。糟それ自体が世の中の金銀財宝である、と。

読売新聞

米国で脳科学を市場調査に利用する「ニューロマーケティング」と呼ばれる手法が注目されている。/商品や広告について尋ね、あいまいな感想や意見を得る方法が通常の市場調査のやり方だ。だが、機能的磁気共鳴画像(fMRI)と呼ばれる脳内の「スキャナー」装置が進歩し、直接、被験者の脳の反応を確かめる「神経市場調査」が可能になってきた。/米カリフォルニア大サンディエゴ校の元神経学者らが2008年に設立したマインドサイン・ニューロマーケティング(サンディエゴ市)社。米国の市場調査会社の中で唯一、自前のfMRI装置を持つ。/同社の主要な顧客は、映画製作会社だ。被験者に映画の予告編を見せながらリアルタイムで脳血液の変化を観察し、そのデータを基に、「どこが受けてどこが受けなかったか」をアドバイスする。/映画業界も、これまでは、どうすれば観客が笑うか、怖がるかは製作者の経験が頼りで、結果を客観的に計測したり、予測したりする手立ては無かった。/スティーブン・スピルバーグ監督の映画会社「ドリームワークス」出身のフィリップ・カールセン同社副社長は「広告宣伝に巨費をかける時代に、結果をカンに頼って済むのか」と、映画製作にも脳科学を生かすべきだと主張する。/同社がハリウッドの次に顧客として狙うのは政界だ。被験者にオバマ大統領のスピーチを見せて脳内の反応部位を記録するなど、基礎データ集めを急いでいる。南米の政治家から照会もあった。/演説が脳の感情をつかさどる部分に届けば、有権者の心をわしづかみにできる。恐怖を感じる部位を刺激できれば、敵対候補のイメージを傷つけられる。直接、脳に「聞き」、演説文をどう修正するか、テレビCMはどれがいいか、ポスターは何色がいいか、明快な答えを得ようという戦略だ。/ニューロマーケティング隆盛の兆しを受け、米国では、脳をのぞき見し、意図的に脳に刺激を与えることが、社会的に許されるかどうか議論する「脳神経倫理学」と呼ばれる研究分野も生まれた。

――NOと言える脳。

産経新聞

「世界中の子供たちに1人1台のコンピューターを。それが実現すれば、世界の教育環境は著しく充実するだろう」/これは、1970年代半ばに端を発するPC革命の初期から、推進者たちによって描かれていた未来の「夢」の一つだった。その時点では、荒唐無稽(むけい)とも思える「夢」を掲げ、技術革新による「夢」の実現に邁進(まいしん)していくのが、米国西海岸の流儀である。/最近、この「夢」に大きな進展があった。インドの人的資源開発省が高価なPCを購入できない地方の学生や子供たちを対象に1台35ドル(1500ルピー、約3000円)の超低価格PCをインド工科大学(ITT)などと共同開発したのである。/米グーグルから無償提供されるOS「アンドロイド」を搭載したタブレット型PCの価格は、来年の発売時に35ドル。そして徐々に20ドルに引き下げ、最終的には10ドルにするという構想である。大学から導入を開始し、その後、中学や高校へと広げていくという。この発表は、はるかかなたにあった「夢」が、手の届くところまで近づきつつあることを意味する。しかも、20世紀には想像できなかった「新しい流れ」がいくつも生まれ、それが「夢」の実現を加速している。/第1の「新しい流れ」はOSが無償になったことだ。グーグルが「アンドロイド」を無償提供するのは「世界のインターネット人口が1人でも増えればグーグルの検索事業が潤う」という構造が、ここ5年で確固としたものになったからである。/第2の「新しい流れ」は、英語圏に特有の現象ではあるが、ウェブ上に教育用コンテンツがあふれんばかりに充実してきたことである。本欄でもたびたびご紹介してきたように、欧米一流大学では、講義映像や授業内容をウェブ上に無償公開するのが常識になった。これもここ5年の動きである。PCとネット接続環境さえあれば、新興国や途上国でも欧米先進国と同質の教育を受けられる可能性が一気に広がったわけで、このことが、超低価格PC開発の大きな動機付けになった。/第3の「新しい流れ」は「新興国発世界へ」というイノベーションのありようが確立したことである。先進国が構想する商品を下請け生産するだけという役割から新興国が脱皮したのもここ5年のこと。インド主導の超低価格PCのムーブメントは世界中に広がっていくに違いない。/「夢」の実現の加速は、新興国、途上国の個人にとっては掛け値なしに素晴らしい。しかし、先進国の、特に供給者の立場からは複雑な思いもよぎる。価値ある商品やコンテンツ自体が、おそるべきスピードで、先進国の感覚での「タダ同然」に近づき、しかもそれらが先進国にも逆流してくる未来が容易に想像できるからだ。/こうした「新しい流れ」の中で先進国の供給者が考えるべきは、「タダ同然」となった要素群をインフラとして駆使した付加価値の高いサービスを創造することだろう。米国西海岸発の「夢」が、新興国発のイノベーションによって実現に近づくとき、新しい付加価値は新しい発想で生みださなければならなくなるのである。http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100830/biz1008300318001-n1.htm

読売新聞

こどもの歓声が響いた夏休みもあとわずか。この間、いかにもこどもっぽさを思い起こさせた騒動に、ヘリコプター墜落事故を起こした第6管区海上保安本部のしどろもどろ会見があった。都合が悪いことを隠そうとし、言を左右にする。そんな「ほおかむり体質」が強く印象に残った。/もちろん「できれば怒られたくない」との気分は、何も同本部の”専売特許”ではない。企業の意思決定時によく出会う行動でもあるらしい。/日本能率協会グループの調査会社社長、太田大作さんの経験では、IT(情報技術)投資を決めるとき、最大の障害は執行役員や本部長クラスの「社長に怒られたくない」という気持ちだという。
企業は業務効率化やコスト削減を目指し、かなりの額のIT投資を行ってきた。保守契約の見直しや追加投資などの組み合わせで、より効果が上がることもあるが、効果が大きいほど中堅幹部はトップヘの提案を躊躇する。/過去の投資効果が乏しく、コストの精査も怠っていたのではないか――そんな目を向けられるのは困るし、システムの素人相手にうまく説明できそうもない。そんな意識が働くことが多い。/もうひとつの障害は、いざ改革に取り組んでも、自社の技術社員が、システム開発・運用会社に丸め込まれ、”お稚児さん”のような手先と化してしまうことだという。/大型汎用コンピューター全盛の70年代までは自力で対応できたが、UNIXマシンの登場など、小型化・複雑化が進んだ80年代以降、その傾向が強まった。自社の技術知識の陳腐化が早く、おのずとシステム会社に「お任せ」になる。複雑化したシステムには不透明な「マネジメント費」などの名目で高額の支払いを迫られ、売り上げは100億円程度なのに1000万円以上もムダな費用を払う会社もあった。/太田さんらは、すべての契約を点検し直せばコストが下がることもあるし、年単位の、保守契約から保守費用の都度払いや保険への切り替えも効くと説くが、より重要で有効なのは小手先のテクニックではなく、脱「二つのこども化」への意識改革だという。/クラウドコンピューティングの時代に向け、今後も相当額の投資が見込まれるが、日本企業のIT投資に占める保守・運用など固定費の割合は80%弱。米企業の50%強に比べかなり高い。固定費を下げ、競争力強化への投資余力を生み出せば、そこに活路が見いだせる可能性もありそうだ。/くだんの海保の例を見るまでもなく、組織が大人になるのはとても難しい。が、越えねばならぬ壁のようである。

「誠に残念ながら」って、書いた本人は絶対そう思ってない。

「誠に残念ながら」って、書いた本人は絶対そう思ってない。

読売新聞

その弁当は店主の故郷である青森・鰺ケ沢のほたてが薫る炊き込みご飯で、店に並ぶと30分強で売り切れる。仕事が減る一方の土木会社勤務に見切りをつけ、今年開業した。事業が軌道に乗ったとはまだいえない。それでも将来は、カロリーを抑えた生活習慣病患者にも適した弁当の開発や、アジア出店など夢も希望もある。/「“生活習慣病弁当”やアジア出店が実現したら、政府の成長戦略の『戦略分野』に転身を果たしたことになるかな」/そう明るく話すが、「でも会社生活をやめる決断は、命綱から手を離す思いだった。肩書も経験も役に立たなくなるから、転落するかもしれない怖さがあった」と苦労もにじませた。/戦略分野は、政府が「新成長戦略」に盛り込んだ優先政策だ。急速に衰えている日本経済を再び成長軌道に乗せるために、今後成長が見込まれる「健康」「環境」「アジア」など7分野、21事業に優先してヒト、モノ、カネをつぎ込み、産業構造を転換させる内容だ。計画通りに進めば、平成32年度までの平均で名目3%、実質2%を上回る経済成長を実現できるという。/しかし、この「戦略」には、遂行に伴う苦労は描かれていない。優先事業があれば、後回しになる事業も生まれる。後回しにされた事業の従業員は、それまでの地位や技術や経験を棄てなければならなくなるかもしれない。だとすれば、「戦略」は、少なくとも、その選択を促す方法を示さなくてはいけない。/できたての炊き込みご飯を手際よく箱につめながら、店主の勢いは止まらない。/「戦略は否定しないよ。税金をほろびゆく産業の救済に使うより、伸びる産業に使ったほうが日本全体にためになるに決まっている。でも、そうしないと日本が危ない、とまくしたてる間にも、命綱からの手の離し方や、次の命綱の見つけ方を身をもって示してほしいね。そうしたら日本人もたくましさを取り戻すかもしれない。あれだけオバマ大統領の『チェンジ』に感激した国民だし」/産業構造の転換は、韓国が経済危機から脱出するために国をあげて取り組んだ。財閥同士で自社の事業を譲渡しあって競争力を高めるなど、大がかりな産業再編も経験した。韓国経済が世界で勢いを増している源泉はそこにある。日本では、命綱から手を離す覚悟を誰が示すのか。http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100806/plc1008060847002-n1.htm

産経新聞

今年に入ってから、本欄で米グーグルと米アップルのことを取り上げてきた。IT産業界を長く支配してきた米マイクロソフトの覇権が、グーグルとアップルへと移行する「時代の大きな転換点」に差し掛かっているからである。6月末時点での世界の時価総額上位企業ランキングでも、時価総額2289億ドルのアップルは、マイクロソフトを抜いて第3位に躍り出た。アップルより上には、石油関連の米エクソンモービルと中国ペトロチャイナしかいない。/グーグルもアップルもシリコンバレーの会社である。いいタイミングなので、ここ数カ月、私はこの地の仲間たちと、シリコンバレー史を振り返りつつこの覇権移行の本質について語り合う、という試みを続けてきた。対話を経て印象に残ったのは、インターネットという新しい成長分野が定義された後の歴史において「人が流動すること」こそ決定的に重要だったということだ。/新しい成長分野が定義されると、多くの企業でさまざまな試行錯誤がなされる。成長分野と言っても未知の世界での挑戦だから、成功する保証などどこにもなく、失敗して撤退、清算というプロジェクトも多くなる。失敗まで行かずとも、しばらくして「これ以上は力を入れない」と決まり活性度を失うプロジェクトもある。そんな中、一握りの企業が大きな成功のきっかけをつかみ、雇用を増やし事業を急拡大していく。/撤退や失敗も含むこうした営み全体の中で、たくさんの人々が新しい経験を積み、新しい成長分野における知識を得る。その貴重な経験と知識は、「人が流動すること」によって、成功のきっかけをつかんだ企業へ流れ込み、多様な経験と知識が融合して大きく花開き、それがグローバル競争力につながっていった。/アップルやグーグルの成功が、失敗プロジェクトを経て流れ込んだ人材の活躍に支えられてきたことを、私はこのたび、改めて詳しく学んだ。新しい成長分野を創出する過程における雇用は、既存産業における安定的雇用とは性格が異なるのだ。/先進国で雇用を創出することは、年々難しくなっている。急成長を続けるアップルですら、製品をつくる中国で米国の10倍以上の雇用を生んでいる。パナソニックの大坪文雄社長は、新規採用のグローバル比率を高めると先ごろ表明した。先進国の製造業の多くが新興国市場に成長機会を求めるから、国内の雇用はなかなか増えない。/よって先進国では、新しい成長分野の定義・創出が急務となり、日本でも6月に新成長戦略「『元気な日本』復活のシナリオ」が閣議決定された。「強みを活(い)かす成長分野」として、グリーン・イノベーション(環境分野)とライフ・イノベーション(健康分野)が定義され、前者で140万人、後者で284万人の雇用創造が目標として掲げられている。この成長分野での未来の雇用の姿を私たちはどうイメージしたらよいだろう。成長分野での雇用創造は、大きな成功が生みだせなければ絵に描いたもちにすぎなくなる。試行錯誤をやりやすくし、次々と素晴らしいイノベーションを生み、それを大きな成功へと結び付けていくためには、「人が流動すること」を積極的に肯定する発想を盛り込んでいくべきだろう。http://sankei.jp.msn.com/economy/it/100726/its1007260457000-n1.htm

――「撤退や失敗も含むこうした営み全体の中で、たくさんの人々が新しい経験を積み、新しい成長分野における知識を得る。その貴重な経験と知識は、「人が流動すること」によって、成功のきっかけをつかんだ企業へ流れ込み、多様な経験と知識が融合して大きく花開き、それがグローバル競争力につながっていった」会社が事業に失敗し、損失をこうむったとしても、個人の失敗はイコール損失とはならない。貴重な経験として別の局面に新たな知を吹き込むという、その流動性を担保する経済システム構築を要請するに際し、僕らは”へこたれない”精神を涵養しなければならんなあ。

産経新聞

独居高齢者の寂しさ軽減に役立てようと、先立った夫や妻と会話しているような感覚を得られるバーチャル(疑似的)映像のシステムを、同志社大学の藤井透教授(62)=機械工学=が開発した。近く全国の自治体や企業に協力を呼びかけ、1年以内の実用化を目指す。日本認知症ケア学会の松本一生理事は「脳活性化に大きな効果が期待できる」と期待を寄せる。/このシステムでは、生前の写真や、ビデオに残った映像などを活用し、亡くなったパートナーの表情や声を再現。利用者がテレビやパソコンの画面を通じて会話を楽しめる仕組み。/赤外線センサーで利用者の動きをとらえ、自動的に声掛けをしたり、あいさつや問いかけに応じたりする。複雑な言葉が投げかけられても、オンラインで結ばれた支援センターで待機する専門アドバイザーが返答を入力し、会話が成り立つようにする。/当初は約2000種類の呼びかけや返答を入力してスタートし、数年後には数万種類の会話に対応できるようにする。藤井教授は「1人暮らしのお年寄りが健康で安心して暮らせるよう、活用してもらいたい」と話している。http://sankei.jp.msn.com/life/trend/100726/trd1007261830007-n1.htm

――いかにも科学者的な発想がいいなあ・・・。

産経新聞

経済産業省は23日、再生可能エネルギーの全量買い取り制度案を有識者会合に正式に提示した。太陽光や風力などで発電した電気を電力会社が買い取り、費用を電気料金に上乗せする制度だが、産業界は国際競争力の低下を招くと強く懸念しており、制度実施に際して負担軽減策を導入するよう求める声が根強い。/買い取り対象は、家庭の太陽光発電に加え、風力、水力、地熱、バイオマス発電などすべての再生可能エネルギーとなる。制度導入から10年後、夫婦と子供2人の標準家庭で1カ月当たり約150~200円、大規模工場で同120万~163万円負担が増える見通しだ。/直嶋正行経済産業相は23日の会見で「国民負担と経済成長のバランスを考慮した」と指摘。年内に制度の詳細を詰め、早ければ平成24年春の導入を目指す考えだが、産業界はコスト増と国際競争力低下に直結すると警戒を強めている。/筆頭は、エネルギーを多く消費する素材産業だ。経産省のヒアリングでは、規制の緩やかな海外に生産拠点が流出する空洞化を引き起こすと指摘。「生産、雇用の縮小などで国力低下につながりかねない」(日本鉄鋼連盟)と訴えてきた。/「将来的にエコ製品を伸ばすためには、国内の素材産業が重要」(日本化学工業会)との声も上がる。エコカーに使う蓄電池や軽量な鋼板など多くの環境関連技術の開発は、素材産業が担ってきた。負担増は、これからの成長が期待される環境産業の芽を摘みかねないとの主張だ。/このため、産業向け大口電力については負担を軽減する特別扱いを国に求める声も出ているほど。その矛先は電力会社にも向かいつつあり、企業と電力会社が相対で価格交渉を行う際に負担分を値下げするよう要求する可能性は「否定できない」(電力業界関係者)とみられている。/防戦を強いられかねない電力業界は、広く公平に負担するという制度の趣旨を生かすためにも「全量買い取り制度の枠外で別の手段を検討すべきだ」として、排出量取引制度や環境税と一体で負担のあり方を検討するよう政府に求める考えだ。http://sankei.jp.msn.com/life/environment/100723/env1007232233004-n1.htm

――「「将来的にエコ製品を伸ばすためには、国内の素材産業が重要」(日本化学工業会)との声も上がる。エコカーに使う蓄電池や軽量な鋼板など多くの環境関連技術の開発は、素材産業が担ってきた。負担増は、これからの成長が期待される環境産業の芽を摘みかねないとの主張だ」環境ビジネスは、あくまでビジネスなんだなあ。ビジネスしなければ(不景気になれば)CO2排出量はふつうに減るだけになあ。

産経新聞

今回の参院選挙では、民主党も自民党も、税制の改革を前面に打ち出した。日本の財政状況を考えると当然のことであるが、ただ焦点が国の予算を改善する視点での消費税の増税と、国際競争力のための法人税減税にばかり目が向いた感がある。/私自身は、精神科医や大学教員をやりながら、20年以上にわたって教育産業を主宰しており、その関係もあって、零細・中小企業の経営に関心がある。今回は、学者や専門家の立場を離れて、町の中小企業の経営者としての視点から税に関する不安や不満を率直に書いてみたい。/1つ目の不安は、消費税の増税の価格転嫁についてである。/筆者の携わるような教育産業でも、少子化によって売り上げの減少に苦しむ会社が少なくない。さらに長引く景気低迷によって十分な教育費を捻出(ねんしゆつ)できない家庭が増えたことで、経営者として増税分をおいそれと価格に転嫁できるか極めて厳しい環境にある。/しかし教育は、子ども手当や高校無償化などの政策によって、家庭から回ってくるお金を当てにすることが多少とも可能だが、ほかの多くの中小企業経営者にとっては増税を商品の価格に転嫁することは困難と考えられる。/もちろん、収入が増えないのに消費税の増税があれば、内需の落ち込みも心配である。輸出産業にはそうした心配は少ないのかもしれないが、貿易立国のように思われる日本の輸出は実は、国内総生産(GDP)の13%に過ぎないことを留意すべきだ。われわれを含めての多くの第三次産業は内需のもとに成り立っているのである。/消費税の高い欧州連合(EU)諸国はその分、福祉も手厚く、教育や医療もタダ同然である。高い税の国内消費への影響は少ないだろうが、日本で果たして消費がどうなるかに強い疑問を感じる。/一方で法人税が下がるからいいだろうと思われがちだが、留意すべきは、法人税というのは原則的に利益を出している法人にしかかからないことだ。大企業などではリストラなどで経営体質を改善し、バブル期以上の黒字を確保している会社も少なくない。しかし統計上は、日本の法人の7割が赤字なのである。要するに多くの中小企業は、その恩恵を受けないのである。/それ以上に、中小企業の経営者として恐れるのは、法人税を引き下げる代わりに、経費の認定が厳しくされるのではないかという現場での問題である。/法人税についてはバブルの崩壊後、幾度も引き下げられた。欧州やアジア諸国と比べればまだ高いとはいえ、昔と比べて随分安くなった印象はある。ところが中小企業の経営者は5年に1度の税務調査のたびに、前回経費として認められた経費を否認されるという苦汁をなめている。これは、私に限ったことではなく、多くの知り合いの中小企業経営者から聞かされる話でもある。/大きな企業と違い、地元税務署の調査を受ける中小企業には、より細かい経費のチェックがあると思うのは被害妄想だろうか。税率を下げても、各税務署が税収を確保するために、経費の認定を厳しくしているのではないかという声も聞かれる。/しかし企業を経営する上で、経費認定がころころ変わるほど不自由なことはない。怖くて経費が使いにくいうえに、法人税が下がるのであれば、ますます企業は経費を使わなくなり、設備投資が落ち込んだり、企業部門の消費が冷え込むだろう。/税務署の査察者によって、あるいは税務署によって判定が違うという話もある。人がやることだから基準が明確にならないのはある程度やむを得ないが、実際には国税OBの税理士を雇った方がいいというアドバイスを聞かされるのも事実なのである。/現在、税務署員は23年間の勤務を経て指定研修を修了すれば税理士になれる。難関の税理士試験に合格した人より、税務署OBを顧問税理士にした方が有利といった風評が流れること自体が民業圧迫そのものである。事実なら、職権を利用した悪質な天下りといわれても仕方がないだろう。/以上のような筆者の実感でいうと、税務調査は今より頻繁に行っていいから、本質的な脱税、つまり売り上げのごまかしや架空経費のチェックに専念すべきだと思う。その代わり経費認定については、少なくとも景気が悪い間は原則的に申告制度を認めるべきなのではないだろうか。その際、設備投資などは、原則的に経費として認めるべきだ。税率を下げるより経費認定を緩めるほうが消費促進の効果は確実にあるはずだ。/不正の排除には、手書きの領収書を認めないとか、記録の残るレジスターで打たれたものや振り込み記録を認めるなど工夫のしようはある。机上の議論でなく現場に立脚した公正で、そして消費の促進の観点からの税制を検討してもらいたい。http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100723/fnc1007230336000-n1.htm

――「一方で法人税が下がるからいいだろうと思われがちだが、留意すべきは、法人税というのは原則的に利益を出している法人にしかかからないことだ。大企業など ではリストラなどで経営体質を改善し、バブル期以上の黒字を確保している会社も少なくない。しかし統計上は、日本の法人の7割が赤字なのである。要するに 多くの中小企業は、その恩恵を受けないのである。/それ以上に、中小企業の経営者として恐れるのは、法人税を引き下げる代わりに、経費の認定が厳しくされ るのではないかという現場での問題である」高額所得者に対する累進課税強化を批判し、国際基準という錦の御旗で法人税軽減を進めるべきだという新聞の論調は、スポンサーである大企業と経営者のお歴々に媚売ってる以外の何者でもない。

読売新聞

民主党の敗北は菅首相の唐突な消費税議論だと言われるが、各種世論調査を見ると、高負担高福祉を求める声が多数派なようであり、同じように消費税導入検討を始めるとしていた自民党が勝利したことを併せて考えるなら、国民の中には消費税増税やむなしという判断があると考えざるを得ない。/世界最高の高齢社会となりつつあるわが国では、少子化もとどまることがなく、若い世代が高齢者を支える社会保障制度を継続することは不可能であり、高齢者自身にも応分の負担を求める必要が生じる。高齢者を含めた国民全体があまねく負担を分け合うには、高額所得者に対する所得税増税、相続税の強化など、さまざまな施策が複合的に展開される必要があるが、最終的には消費税の増税は必須であろう。/そんななか、若者の雇用問題を論じ続けていた城繁幸氏らからなる「ワカモノ・マニフェスト策定委員会」による『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)も、「雇用」「社会保障」「政治参加」「子育て・教育・家族」の四つの視点から若い世代を軽視する政治を告発し、具体的な政策=ワカモノ・マニフェストを提案、世代間格差の是正には消費税の導入が必要だとしている。/経済が伸びている時代には、そこで生まれた利益は、多少不平等に分配されても、国民の隅々まで行き渡りやすい。しかし経済が縮小する時代には、よほど丁寧に利益の分配作業をしないと、パイにありつけない国民が増加する。数年前の景気回復が「雇用なき景気回復」と言われたように、一方には莫大な利益を上げる企業があったのに、他方には仕事にありつけない人が増えてしまった。多くの国民に景気回復が実感できなかったのも、利益の配分の仕方が不平等だったからだと考えざるを得ない。当時、小泉首相が「痛みに耐えよう」と言った、その痛みも、一部の国民に集中し、国民全体によって分配されなかったと言える。/こうした事態の進展に対して、神野直彦の『「分かち合い」の経済学』(岩波新書)は、今ある危機を乗り越えるには「痛み」や「幸福」を分かち合う、新しい経済システムの構築が必要だと唱える。しかし、貧困者に給付を与えるような[垂直的分配」が「分かち合い」ではないと神野氏はいう。垂直的分配では格差や貧困が固定され、むしろ拡大する。それよりも、所得の多寡にかかわらず、育児、養老、医療などのサービスを無料にするなどの「水平的分配」のほうが格差や貧困は解決されるという。/また、バブル時代以来、経営コンサルタントとしてテレビなどでも活躍し、市場主義者の立場で論を展開していた波頭亮の『成熟日本への進路』(ちくま新書)も、サブタイトルの「『成長論』から『分配論』へ」が示すように、本格的な成熟期に入ったこれからの日本では、これまでのような成長戦略は不要であり、同じGDP(国内総生産)でも所得の再分配によってもっと国民が豊かさを実感できると主張する。これは市場主義者からの「転向」であるが、その転向の理由は、波頭自身が近年、「自分自身のアイデンティティヘ向かう内向的な意識のベクトルではなく他者や社会へ向ける目線や気持ちが、現代の社会においては人々が幸せに生きていく上ではより重要に感じられ」るようになったからだという。/しかし、増税という負担に国民が納得して耐えていくには、官僚ではなく国民自身が税の公正な使い道を決定することができる仕組みが機能することが大前提である。若い世代の声を聞きながら、その仕組みを作ることが政治に期待される。

読売新聞

インドネシアの山奥に、世界の高級リゾートに影響を与えた小さなホテルがある。30棟の戸建て客室が敷地に点在し、茅葺き屋根の客室には家具や食器が土着の工芸品で簡素に揃う。ドアボーイはおらず、フロントも無人のことが多いが、五つ星ホテルの中でも常にトップクラスの評価を受け、富裕層がリピートする。/ここの贅沢さは、豪華絢爛な「非日常」とは違う。もしも自宅に優秀なスタッフ陣がいたなら叶ってあろう、極上の「日常」だ。警備ゲートを抜けチェックインを済ませると、部屋番号を言わなくてもサインをしなくても、逐一フロントに行かなくても、敷地内で絶妙に出会う全スタッフが顧客のひとりひとりを把握し、空気のように情報やサービス、会話を提供する。/イザベル・テランス著『フランス高級レストランの世界』(中央公論新社、2800円)によると、高級化の歴史が長いフレンチレストラン界でも、最上級のサービスとは歴史ある富裕家庭の心地よさを再現することだ。財力の誇示や奇をてらった演出は、審美眼を持つ顧客を遠ざける。家庭的でも高級な世界とは、空間や美術品、工芸品、食事のメニューに至るまで、地元の文化や家族の伝統を重んじ、現代のスタイルに趣味よく取り入れることから始まる。接客はかしずくことではなく、安心を生むために磨かれる。堂々としながら控え目に、温かく迎えつつ、顧客の目的を即座に見抜いて最適な接し方を個々に組み立てる。/一級の店は、懇談と商談と接待、業界ごとでも所作が変わるという。例えば契約を伴う食事なら、前半のワイン解説にユーモアを入れて場を和らげ、条件交渉に入るチーズの出る頃には、スタッフは静かに身を隠す。/豪華さの一枚上を行く高級さは、ゆるきない安寧に対価が支払われている。

読売新聞

企業数では全体の99%以上、従業員数でも全体の60%強を占める中小企業が、日本の産業を支える基盤として果たしている役割は非常に大きい。日本の中小企業は、大企業と相互補完関係を構築するとともに、米欧におけるベンチャー企業の役割も担ってきた。/例えば製造業では、部品の製造や大企業の製造工程の一部請負などの形で産業発展に貢献すると同時に、大企業から要請されるコスト削減や生産量増減時の緩衝材としての役割も担ってきた。/一方で、「匠の技」とでも呼ぶべき独自の優れた技術や技能を有し、技術革新をりードするとともに、大企業が目をつけないようなビジネスチャンスにも挑戦してきた。中小企業の中には、世界的に高シェア(占有率)を誇る製品を持っているところも少なくなく、今後も活力ある中小企業が勃興し、繁栄していくことが日本の経済成長にとって不可欠である。/経済成長の原動力は、労働力、投下資本、イノベーション(革新)であると言われる。日本が少子高齢化社会に本格的に突入し、対日直接投資も世界的に最低レベルである現状を踏まえると、国内では継続的なイノベーションヘの取り組みを通じ「質的な経済成長」を目指すのが現実的だ。イノベーションを支える人材育成は企業にも国家にも最大の課題である。/一方、「量的な経済成長」を実現していくには、新興国を中心とした海外の成長市場へ事業を展開していくことが、中小企業といえども経営上の主要な課題である。/しかし、こうした成長戦略を中小企業が国内外で展開するには多くの課題が立ちはだかっている。まず経営やイノベーションを担う有能な人材の獲得と育成である。獲得、育成の両面で大企業に比べて苦闘している。次に運転資金・投資資金の調達であろう。資金繰りの悪化や手元資金の積み増し等、中小企業の資金需要は高い。さらに、海外に事業を展開する上でのノウハウ不足、知的財産の権利化と活用も挙げられる。/これらは個別の中小企業では解決困難なものが多く、単独での事業展開に限界を感じた中小企業が海外企業による買収提案を合理的判断として受け入れることになれば、日本の優れた技術やサービスの流出にもつながりかねない。/そこで、大企業や中小企業、地方自治体による、地域別・業種別の「官民合同持ち株会社」の設立を提案したい。大企業と自治体が出資して持ち株会社を新設し、参加を希望する中小企業と持ち株会社の間で株式を交換する方法や、大企業や自治体が金銭等を出資する一方、中小企業のオーナーは保有株式を現物出資する方法などによって、持ち株会社の下に複数の中小企業をぶら下げるのである。/大企業はOBを中心に人事・人材育成、経理・財務、知的財産・契約交渉、海外展開等の専門人材を派遣または紹介し、持ち株会社の傘下に入った中小企業は割安の手数料で個別企業だけでは得られなかったサービスを享受できる。また、持ち株会社の傘下に入ることは有力な買収防衛策にもなる。/産業発展の下支えという重要な役割を果たす中小企業が今後も事業を継続し発展していくことができるよう、直面する課題を除去・緩和する仕組みを、大企業と政府・地方自治体が協力して作り上げていくことが求められている。

――持ち株会社の傘に収まることで、株だけじゃなく人材も持ち合おうという発想。